コア

Koa (Acacia koa)

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古代ハワイにおけるコアは、強い神々に護られた森の主として、厚い尊崇を受けた樹木であった。コア(koa)には「勇敢な」や「雄々しい」などの意味があることからも、古代ハワイ人のこの長命な木に対する畏敬の念がうかがえる。

日本語名
ハワイ語名 koa
英語名
学名 Acacia koa
分類 マメ科(Fabaceae)アカシア属(Acacia)
その他 ハワイ固有種(endemic)

分布

E

ハワイ固有種。ある時期まで、主要6島の標高2,000mくらいまでの地域では、コアの森はとても一般的だったらしい。しかし、激しい伐採と家畜放牧の結果、他のハワイ在来の動植物同様、コアの数も現在かなり減少している。

特徴

樹高30m以上になる高木。若い葉は、コア・ハオレLeucaena leucocephala)の葉にそっくりの、シダ植物のように小さく分かれた羽状複葉である。それが生長するに連れて、細い三日月型になる。一般的にコアの葉として認知されているのはこの三日月型のほうだが、厳密には葉ではなく、葉柄が広がって葉身のようなはたらきをする偽葉である。

花は濃いクリーム色で、小さなボンボン状【写真1】。葉も花もフォルモサ・コア(台湾コア、Acacia confusa)に似ているが、コアのカーブした葉に比べるとフォルモサ・コアのそれは真っすぐで、花はクリーム色のコアの花に対して、濃い黄色である。

コアの花
【写真1】コアの花

利用:カヌー

コアは、古来より上質の木材とされてきた。長く真っすぐな幹を持ったコアは、カヌーの材料として使われた。過去に記録されたダブルカヌーで最大のものは、一つの船体の長さが37m、深さが3mもあったそうだ。ハワイの在来植物では最大の木である。しかしそれほどの巨大なコアの木は、現在ではなかなか見かけることはない。

カヌーは、それ単体では簡単にひっくり返ってしまうので、舷外浮材(アウトリガー)を装着する必要がある。このアウトリガーには通常ウィリウィリの木が、アウトリガーと船体を繋ぐ支柱にはハウの木が使われ、パドルにはコアが使われたそうだ。

利用:サーフボード

カヌーに加えてもう一つハワイで重要だった海の乗り物、サーフボード(生活手段ではないが)の主材料としても、コアが使われていた。今の用語で言うショートボード(それでも現在のもとの比べるとかなり長い)にはコアが使われたが、ロングボード(最長約6m!)となるとコアより軽いウィリウィリが使われたという。なお、現在サーフボードが木材で作られることは稀で、ほとんどが発泡ウレタンフォームでできている。

ウィリウィリ

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ハワイの花と植物

利用:ウクレレ

ポルトガル人移民が最初にウクレレを作ったときに材料として使ったのもコアだった。コア材を使ったウクレレの伝統は、今日まで続いている。コア材は、現在ではウクレレだけでなく高級アコースティックギター等のサイド/バック材としても使われる。キレがある硬質な音が特徴だ。アコースティックギターの最高級材であるブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)やその他のローズウッドも、コアと同じマメ科の木であることを考えると、コア材はもともとウクレレやギターなどのアコースティック絃楽器に向いているのであろう。極上のコアを使って丁寧に作られたウクレレの質感と木目の美しさは、人を恍惚とさせるものがある。

利用:その他

コアの樹皮は、染め物に使われた。葉は、薬の材料になった。よろずのことに使われるコアだが、ポイの容器としては、ポイの味を悪くしてしまうため、使われなかったそうだ。今日では、家具、宝石入、額縁からしおりまで、様々なコア製品を見ることができる。

真のカマアーイナ

50種ものハワイ固有の昆虫が、コアを住処にしている。また、野鳥とコアのかかわり合いも深く、特に、絶滅したグレーター・コアフィンチ(Rhodacanthis palmeri)は、コアと共に長い時間をかけて進化したといえる。数百万年の歴史を持つコアは、ハワイでもっとも古い樹木だと考えられている。コアは、カヒコ(kahiko、古い)なカマアーイナ(kamaʻāina、ハワイの住人)なのである。

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