キー(ティ、ティーリーフ)

(Cordyline fruticosa)

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利用価値が高いために古代ポリネシア人によってハワイに持ち込まれた有用植物。いわゆるカヌープラントのひとつである。ハワイ語での正確な発音は「キー(kī)」だが、ハワイでもほとんどの人が「ティ(ti)」と発音する。

日本語名
ハワイ語名
英語名
学名 Cordyline fruticosa
分類 リュウゼツラン科(Agavaceae)センネンボク属(Cordyline)
その他 ポリネシアン移入種(Polynesian introduction)

分布

P

もともと自生していた地域ははっきりとわかっていないが、ヒマラヤ、東南アジア、マレーシア、北オーストラリアなどでの在来植物である可能性があるらしい。古代ポリネシア人によって、ハワイを含む太平洋の島々に広く植えられた。ハワイでは主要6島すべてに分布する。標高5~610mの、湿潤で陰が多い開けた森を好む。

特徴

キーの花
【写真1】キーの花

高さ2〜3.5mの低木。葉(いわゆる「ティーリーフ」)は、平らで柔らかい先の尖った楕円形で、長さ40~80m、幅8~16cm。花は大きさ1cmくらいで、色は淡いピンク色、花弁は6枚【写真1】。多くの栽培品種も存在し、様々な大きさ、形、色の葉がある【写真2】。

ティーリーフ『Tutu Elena』
【写真2】Tutu Elenaと呼ばれる栽培品種

利用

古代ハワイ人がもっとも多目的に利用した植物のひとつ。葉は屋根葺きの材料になったほか、雨具、履物、フラのスカート、縄類、笛、子供のソリなどが作られた。さらに、食べ物を包むラップ、皿、コップ、オーブンライナーなどにもキーの葉が使われ、台所や食卓でも活躍した。

キーの多くの部位が、単体もしくは他のハーブと調合されて、不眠症、腎臓の病、ぜんそく、副鼻腔うっ血、結核などのさまざまな薬になった。発熱時に葉を体にあてて熱冷ましに使ったり、熱した石を葉で包んで腰痛の緩和に使ったりもした。また、外傷には若葉を包帯として使った。

果糖を多く含むキーの根をイム(imu、土中に作られたオーブン)で蒸し焼きにしたものは、甘い飴のようになり、菓子として食されたほか、飢饉時の食料にもなった。さらにそれを醗酵させて醸造酒が作られた。1778年にジェームス・クックがハワイに到着して間もなく、蒸留酒の製法がハワイにも伝わり、オーコレハオ(ʻōkolehao)と呼ばれるブランデーのような蒸留酒が作られた。

神聖な植物

農業・音楽の神ロノ(Lono)とフラの女神ラカ(Laka)に捧げられる神聖な植物とされている。また、支配階級や聖職者の権力の象徴でもあった。カーヒリ(kāhili)と呼ばれる、日本の毛槍のような、羽毛で飾られたポール状の王族のシンボルがあるが、このカーヒリの形状は、キーの姿形がインスパイアされてできあがったと考えられている。

キーの伝説

キーにまつわる昔話に、以下のようなものがある。カウアイ島のある王は、彼の長男を捜す旅に息子達の中から誰を行かせるかを、キーの葉で作ったおもちゃのカヌーを使って決めることにした。水に浮かんだ葉のカヌーが、長男探しの旅に行かせるべき息子を示したという。

他にこんな伝説もある。昔、ワイピオ川には一匹のサメが棲んでいた。ある男が勇気をもって川を泳いで渡るときに、男はキーの茎を川に投げ入れた。男は、もし茎が消えてしまえばサメが近くにいると考えた。もし茎が下流に流れてゆけば、男は川に飛び込み、泳いで川を渡った。

家のお守り

キーには場を浄める力があるとされ、古代ハワイでは、家の周りやヘイアウ(heiau、祭祀場)に植えられた。垣根としてや、台所の必要に応じて葉を使うという実用的な理由のほかに、魔除けのお守りでもあるのだ。ハワイで今日でも民家の玄関先や庭、ホテル、コンドミニアム、商業ビルなどに好んで植えられるのは、そのなごりなのかもしれない。ホノルルのカイムキーにある拙宅の玄関前にも、一本のキーがささやかに植えられている。

余談ながら、カイムキー(Kaimukī)という地名は、分解すると ka(冠詞「the」)、imu(オーブン)、kī(キー)となり、つまり「キーのオーブン」という意味である。伝説のメネフネ族が、キーの根を焼くためのオーブンを、現在のカイムキーの地に作ったという伝承が、地名の由来だという。

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