オーヒア・レフア(オヒアレフア)

ʻŌhiʻa lehua (Metrosideros polymorpha / M. macropus)

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ハワイの森は昔から神聖なものとされてきたが、特にオーヒアはハワイの神クー(Kū)やカーネ(Kāne)の住処とも地上での姿とも考えられ、神聖視されてきた。オーヒアとその花レフアは、大昔からハワイ人にとってもっとも特別な植物のひとつである。花は『ハワイ島の花』に指定されている。

日本語名
ハワイ語名 ʻōhiʻa lehua
英語名
学名 Metrosideros polymorpha
Metrosideros macropus
分類 フトモモ科(Myrtaceae)ムニンフトモモ属(Metrosideros)
その他 ハワイ固有種(endemic)
ハワイ島花

分布

E

ハワイ固有種。主要6島すべてに分布する。海岸から標高約2,600mまで広く見られる。

特徴

種小名のpolymorpha(poly=たくさんの、morpha=形)が示す通り、高さ、葉の形、花の色や質感まで、かなりバラエティに富んでいる。大きなものでは高さが30m、幹の直径は90cmになるものもある一方で、数メートルの低木であることも多く、ときには高さ十数cm程度で、地面を這うように育つ場合もある。葉は対生で、丸いもの、細長いもの、先が尖ったものなど、様々な形が見られる。花は、赤い糸が房になったポンポンのような形をしている。花の色は赤がもっとも多いが、黄色、サーモン色、ピンク色などもある。

近縁種に、オアフ島のみに分布するレフア・アーヒヒM. tremuloides)がある。本種と比べると数は少ない。

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呼び方

オーヒアは木の名前で、レフアはその花の名前だが、現在では木のこともレフアと呼ばれることがあり、総称としてオーヒア・レフアと呼ばれることも多い。 レフアは、髪の毛という意味である。花の姿から付けられた名前であろう。

赤色コンビ

本種の花は蜜を多く含んでいて、アパパネ(アカハワイミツスイ)イイヴィ(ベニハワイミツスイ)などのハワイミツスイ類にとって大事な食物である。これらの赤いハワイミツスイたちの体の色は、オーヒアの花に対しての保護色に違いない。ハワイの森を代表する花と鳥の赤いコンビネーションは、いつ見ても美しい【写真1】。

イイヴィとオーヒア・レフア
【写真1】イイヴィとオーヒア・レフア

白いオーヒア・レフアの花?

真っ白なオーヒア・レフアの花が存在するという噂があるが、真偽のほどはわからない。オーヒア・レフア(M. macropusM. polymorpha)にはたくさんの土着の呼び方があり、そのうち白い花をつける木を指す呼び名だけでも、以下のものがある。

  • オーヒア・ハーケア(ʻōhiʻa hākea)
  • オーヒア・ケア(ʻōhiʻa kea)
  • オーヒア・レフア・プアケア(ʻōhiʻa lehua puakea)
  • レフア・ハアケア(lehua haʻakea)
  • レフア・ケア(lehua kea)
  • レフア・プア・ケア(lehua pua kea)

ケア(kea)は白色、ハーケア(hākea)やハアケア(haʻakea)は「白っぽい」、プア(pua)は花という意味。

他に、オーヒア・ラカ(ʻōhiʻa Laka)という伝説上の木もある。オーヒア・ラカは、東の枝に赤い花を、西の枝に白い花を、それぞれ一輪ずつつけると伝えられている。その材にはマナ(mana、超自然的な力やオーラ)が宿るといわれる。

淡い黄色の花をつけるオーヒア・レフアは実際に確認されているが、純白の花というのは確認されていない。あくまでも伝説上の花なのか、それとも実際に存在する(した)のか、今でも謎のままだという。古い歌にも出てくるし、白い花をつけるオーヒア・レフアを指す名前がこれほど多くあるということは、昔は白い花をつけるオーヒア・レフアが普通にみられたのかもしれない。

火山の女神ペレにまつわる伝説

オーヒア・レフア
溶岩地帯のオーヒア・レフア

オーヒアは、火山の女神ペレ(Pele)に捧げられた神聖な木である。多くのチャントや伝説にオーヒアが登場する。ペレについては、以下のような伝説がある。

オーヒアという男には、レフアという美しい恋人がいて、二人は心から愛し合っていた。ところが、ペレが、オーヒアに恋心を持つようになり、ペレは、とても魅力的な若い女性に変身してオーヒアの前に現れた。しかし、最愛の女性レフアがいるオーヒアは、ペレに見向くことはなかった。激しい嫉妬心を燃え上がらせたペレは、怒り狂い、オーヒアとレフアの命をうばってしまった。

このことを知った彼女の姉妹たちに非難されたペレは、平常心を取り戻し、自分のやったことをひどく悲しみ後悔した。そこでペレは、オーヒアの体を木に、レフアの体をその木に咲く花に変えた。こうしてオーヒアとレフアは、人間であったときと同じように、いつまでも一緒に愛し合って暮らすことができるようになった。

—オーヒアの木が男性的ながっしりとした枝振りであるのに対し、その花であるレフアが女性的で柔らかいのは、木にオーヒアの魂が、花にレフアの魂が宿っているからだと云われている。山道でレフアの花を摘むと、雨が降るといわれる。ペレの怒りなのか、レフアの悲しみの涙なのか……とにかく、山中で雨のために道を失ってしまうと困るので、今日でも、一部のハワイの人々はレフアの花を摘むことを嫌う。

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Rapid ʻŌhiʻa Death(ROD)

そんなハワイでもっとも特別な木のひとつであるオーヒアだが、2010年ごろからハワイ島で新しい病気が発生し、以後急速に広がりつつある。健康そうに見えていたオーヒアの木が数日~数週間で急速に枯れてしまうため、病気はRapid ʻŌhiʻa Death(ROD)と名付けられた。

ハワイ州全体でオーヒアの森は40万ヘクタール以上あるが、2017年のハワイ島での調査では、そのうちの7.5%に相当する約3万ヘクタールの森でRODの症候が見られたという。

RODは、Ceratocystis fimbriataCeratocystis huliohiaの2種の菌類によって起こることがわかっている。病気が見つかってから数年間、ハワイ島以外では確認されていなかったが、2018年5月にカウアイ島でC. huliohiaが確認された。

人間の活動によってRODが広がってしまう恐れがあるため、ハワイ州の農務省(HDOA)は検疫のための新規則を設け、オーヒアを含むすべてのムニンフトモモ属(Metrosideros)の木や土を、ハワイ島外に許可なく輸送することを制限している。

“ハワイ州の固有樹” に指定

2022年5月24日、オーヒア・レフアをハワイ固有種としての “州の木”(the state endemic tree of Hawai‘i)に指定する法案にハワイ州知事デービッド・イゲ氏が署名し、全会一致で可決された。

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