アンスリウム(オオベニウチワ)

Anthurium (Anthurium andraeanum)

アンスリウム Anthurium spp. アンスリウム Anthurium spp. アンスリウム『レディ・ジェーン』 Anthurium cv. Lady Jane

サトイモ科の多年草。多くの種があるが、このページでは主にアンドレアナム種(和名:オオベニウチワ、学名:Anthurium andraeanum)について説明する。

日本語名 オオベニウチワ
ハワイ語名
英語名 anthurium、flamingo lily
学名 Anthurium andraeanum
分類 サトイモ科(Araceae)ベニウチワ属(Anthurium)アンスリウム属ともいう
花言葉 情熱(赤色)、熱心(白色)

分布

A

原産地はコロンビアとエクアドル。原産地では、標高600~1,200mの森に生育する。熱帯アメリカには、アンドレアナムの他にも多くのアンスリウムがあり、その数は500種とも1,000種とも言われている。ハワイで野生化はしていない。

特徴

地下茎があり、そこから大きなハート形の葉が出る。苞(仏炎苞*)もハート形で、ワックスをかけたようにつるつるとしていて、人工物のようでもある。仏炎苞は、後述するオバケを除けば大きなもので長さ14cm、幅9cm。仏炎苞は、原産地である熱帯アメリカの雨林に自生する野生のものはすべて緑色であるという。ハワイで見られる赤色、ピンク色、白色、紫色などの苞は、すべて園芸品種である【写真1】。

*ぶつえんほう。花序を覆う大型の苞。ベニウチワ属のほかに、ミズバショウ属やナンテンショウ属など、サトイモ科の植物に多くみられる。

アンスリウム・アンドレアナム(白)
【写真1】一般的な人気は赤色より劣るが、ウエディングでは好んで用いられる白いアンスリウム | Photo by Forest & Kim Starr

仏炎苞の中心からは、最長7cmの円柱状の肉穂花序が突き出る。花は数ヶ月もち、花瓶などで育てる場合でも数週間はもつ。

ハワイへの移入

1889年、ホノルル生まれの英国人政治家サミュエル・ミルズ・デイモン(Samuel Mills Damon)によって、最初のアンスリウム(アンドレアナム種)がロンドンからハワイに持ち込まれた。1930年代までには、多くの地所や種苗場で育てられるようになり、園芸ファンからの人気も高まっていった。その後は、ハワイの生花店でも売られるようになり、その人気はハワイのみならずアメリカ本土にも広がっていった。

利用

アンスリウムは、ハワイでもっとも人気がある切り花のひとつである。ハワイのバレンタインデーを象徴する花にもなっている【写真2】。商用に盛んに生産されていて、その市場は国際的かつ大規模なものである。ハワイのアンスリウムの多くは、ハワイ島の曇りや霧雨が多い地域の、人工的な陰を作った農園で栽培されている。

アンスリウム
【写真2】赤いハート形の苞は、バレンタインデーのイメージにぴったり

日光と風があまり当たらず、適度な湿度があれば、一年中温暖なハワイの気候では丈夫に育つ。風、潮、乾燥には弱いため、リゾート地の造園にアンスリウムが使われることはあまりない。

オバケ・アンスリウム(obake anthurium)

オバケ・アンスリウム Anthurium cv. Obake
【写真3】オバケ・アンスリウム

仏炎苞が30cm以上になる、巨大アンスリウムの園芸種の総称。オバケ(obake)とは日本語のお化けのことで、「お化けアンスリウム」という意味**。通常、オバケの仏炎苞の縁は緑色で、中央が赤色、ピンク色、オレンジ色、白色などのツートンカラーになるものが多く、それぞれレッド・オバケ、ピンク・オバケ、オレンジ・オバケ、ホワイト・オバケと呼ばれる。【写真3】

**obakeという言葉は、日系人が多いハワイでは外来語として割と定着している。

チューリップ・タイプ(tulip-type)

アンスリウムのなかでは、比較的最近ハワイに持ち込まれたタイプ。上向きでカップ型をしている仏炎苞がチューリップの花弁に似ていることが名前の由来。「チューリップ・タイプ(tulip-type)」と呼ばれ、一般的なアンスリウムやオバケと区別される。

ベニウチワAnthurium scherzerianum

ツェルツェリアナム種。原産地はコスタリカ。アンドレアナム種と違って、仏炎苞に光沢がない。肉穂花序は螺旋状に伸びる。温帯地域を中心に世界各地で栽培されている。英語ではピグテール・アンスリウム(pigtail anthurium)と呼ばれる。Pigtailは直訳すると「豚の尾」だが、「おさげ髪」や「つなぎ紐」などの意味もある。【写真4】

アンスリウム・ツェルツェリアナム(ベニウチワ)
【写真4】ベニウチワ(ツェルツェリアナム種)| Photo by Forest & Kim Starr

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